衝動買いをやめたいなら、買う前ではなく手前を変える
決断力の問題ではなく、決める場所が悪い
お金が貯まらないと感じるとき、たいていは使いすぎを疑います。そこで節約を始めるのですが、しばらく続けても残高があまり変わらないことがあります。我慢の量を増やしても効かないのは、貯まるかどうかを決めているのが使う量ではなく、順番のほうだからです。
使ったあとに残ったぶんを貯める、というやり方をしていると、月によって残る額が大きく変わります。しかも人は、手元にある金額に合わせて使い方を広げるので、余りは平均するとゼロに近づいていきます。
順番を入れ替えると、この性質を逆に使えます。入った時点で先に分けてしまい、残りで生活する。分けた額は手元にないので、使い方はその範囲に合わせて自然に縮みます。我慢しているという感覚が出にくいのはこのやり方です。
額は小さくて構いません。最初から大きく取ると生活が回らなくなり、途中で崩して元に戻ります。続く額から始めて、慣れてから上げるほうが結果的に早く積み上がります。
節約を考えるとき、まず削ろうとするのは覚えている支出です。外で食べた、服を買った。ところがこれらは覚えているぶん、そもそも回数が限られています。削っても効きが小さいのはそのためです。
効くのは、覚えていない支出のほうです。毎月自動で引かれているもの、少額で頻度の高いもの、なんとなく続いているもの。一つずつは小さいので記憶に残らず、合計すると大きくなっています。
見つけ方は、一か月ぶんの引き落としと支払いを、金額の小さい順ではなく回数の多い順に並べることです。回数の多いものは、一回の額が小さくても月の合計で上位に来ます。ここは我慢ではなく、止めるかどうかの判断だけで減らせます。
一度並べておくと、次の月からは同じ作業が要りません。覚えていない支出は、増えるときも静かに増えます。年に二回だけ並べ直す習慣にしておくと、気づかないうちに膨らんでいる部分を早めに見つけられます。
月にいくらまで、と決めても守れないことがあります。振り返ると、崩れる場面はたいてい似ています。予定になかった誘い、疲れて何も作りたくない日、まとめ買いのつもりで行った買い物。
崩れる場面が分かっているなら、そこを我慢の対象にするのではなく、あらかじめ枠に入れておくほうが持ちます。誘いの分を最初から見込んでおけば、来たときに枠を壊さずに済みます。見込んでいないと、一回崩れた時点で今月は無理だとなって、そこから緩みます。
枠は守るために作るものですが、守れない前提を入れておかないと、守れなかった月に丸ごと機能しなくなります。余白のある枠のほうが、結果的に長く使えます。
目的のない貯金は、途中で崩れやすくなります。目の前に欲しいものが出てきたとき、比べる対象が「いつか使うお金」なので、いつも目の前のほうが勝ちます。
目的は具体的でなくても構いませんが、いつごろ、どのくらい、という形にはしておくと比べられるようになります。来年の引っ越し費用、というだけで、目の前の買い物と天秤にかけられる相手になります。
逆に、目的を決めずに額だけ積み上げていくやり方が合う人もいます。この場合は、何もないときの安心そのものが目的になっているので、崩す理由が出にくい。自分がどちらの動き方をするかで、置き方を変えたほうが続きます。
貯まっていないと、お金の使い方が下手だという評価に直結しがちです。ただ、いま使うことに寄せて生活を組んでいる人が、そのぶん経験や機会を得ていることもあります。減っているのはお金だけで、何も残っていないとは限りません。
問題になるのは、使っている自覚がないまま減っている場合です。使った記憶と残高が合わないときだけ、手を入れる価値があります。使ったと分かっていて残っていないなら、それは配分の話であって、失敗ではありません。
この区別をつけずに節約を始めると、必要のない我慢まで抱え込むことになります。続かないのは意志のせいではなく、そもそも減らす必要のないところを減らそうとしているからです。
お金の使い方には、いま使うか先に備えるかという軸と、決めた枠を守るかそのつど判断するかという軸があります。この組み合わせによって、効く方法が変わります。
枠を守るのが得意な人に、そのつど判断する方法を勧めても続きません。逆も同じで、その場で決めたい人に細かい家計の管理を持ち込むと、記録が止まった時点で全部やめてしまいます。
金銭感覚診断では、この二つの軸で使い方の型を見ています。どの型がよいという作りにはしていないので、自分に合う方法を選ぶための材料として使ってください。合わない方法を続けられなかったことは、失敗として数えなくて構いません。
お金の使い方は、二つのことで決まります。今の楽しみに向けるのか、先の備えに向けるのか。そして、決めた枠の中で判断するのか、そのつど状況で決めるのか。この組み合わせで、金銭感覚は4つのかたちに分かれます。10問に答えると、あなたがお金をどう配分しているのかが見えてきます。貯まる人が正しい、という診断ではありません。向け先にも決め方にも、それぞれの効きどころがあります。
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