人との距離感がわからないと感じるときに、分けて考えたいこと
開示の量と、詰め方の速さ。分けると対処が変わる
断れない性格を治したい、と思って調べると、たいてい断り文句の例文が出てきます。試してみると分かりますが、あれはあまり効きません。断れない人が困っているのは言葉が思いつかないことではなく、口を開く時点でもう断らない側に体が動いていることのほうだからです。手を入れられるのは、その手前です。
頼まれた瞬間を思い出してみると、断れなかった人の多くは「断りたくない」と思っていたわけではありません。断るかどうかを考える前に、口が「大丈夫です」と言っている。判断のあとに返事があるのではなく、返事のあとで判断が追いかけてくる順番になっています。
この順番になるのは、その場に沈黙を作りたくないからです。頼まれてから答えるまでの数秒は、相手の顔がこちらを向いている時間です。この数秒に耐えるのが苦しいので、いちばん早く場が収まる言葉が先に出ます。それが「はい」です。
つまり、断れないことの正体は意志の弱さではなく、数秒の沈黙を埋める反射です。反射に対して例文を用意しても、例文を思い出す前に返事が終わっているので間に合いません。
手を入れる場所は、断り方ではなく「返事までの時間」です。その場で答えなければ、反射は発動しません。持ち帰って考える時間さえ確保できれば、断るかどうかは落ち着いて判断できます。
そのために必要な言葉は一つだけです。「予定を見て、夕方までに返します」。断り文句ではないので言うのに勇気が要らず、しかも即答を回避できます。この一文を用意しておくほうが、断り文句を十個覚えるより実際に使えます。
注意点として、持ち帰る時間は短く区切ってください。いつまでにと言わずに持ち帰ると、答えないまま時間が過ぎて、結局相手に催促させることになります。それは断るより関係を悪くします。
上手な断り方を集めても効かないのは、断る場面で困るのが言葉ではないからです。実際に困っているのは、断ってよい頼みごとなのかどうかを自分で判定できないことのほうです。判定がついていない状態では、どんな言い回しを持っていても口から出ません。
しかも、断り文句を探す行為そのものが、断ることを重い作業に見せます。特別な言い方が要るということは、断るのは普通ではないことなのだと自分に教えることになる。用意すればするほど、断ることのハードルが上がる方向に働きます。
実際には、断られた側は言い回しをほとんど覚えていません。覚えているのは、返事が早かったかどうかと、代わりに何か示してもらえたかどうかです。丁寧さは、言葉ではなく速さと代案のほうに宿ります。
頼まれてから考えると、目の前の相手の顔が判断に入ってきます。同じ内容でも、相手によって答えが変わる。それ自体は悪いことではありませんが、あとから「なぜあれを受けたのか」が説明できなくなります。
先に決めておくとよいのは、受ける基準を二つか三つだけ書き出しておくことです。たとえば「その週の残業が何時間を超えていたら受けない」「自分にしかできないものだけ受ける」。数や条件の形にしておくと、その場で相手の顔を見ずに判定できます。
基準は完璧でなくて構いません。目的は正しく選ぶことではなく、判断を頼まれる前に済ませておくことです。基準があると、断るときの言葉も自動的に決まります。今週は無理です、で足りるようになります。
断れるようになった人がつまずくのは、断った直後です。相手の反応が薄かった、次の日に少しよそよそしかった。そこで「やっぱり受ければよかった」と思い、また断れない側へ戻っていきます。
ここで知っておくと楽なのは、断ったあとの気まずさは断り方が下手だったから出るのではなく、断れば必ず出るものだということです。うまく断けば気まずくならない、という前提を持っていると、気まずくなるたびに自分の断り方を疑うことになります。
扱い方はひとつです。気まずさは消そうとせず、次に会ったときにいつもどおり話しかける。断ったことと関係を切ることは別で、その区別は言葉ではなく次の一回のふるまいで伝わります。
断れない性格を治すという言い方には、断れる人になるのが正解だという前提が入っています。ただ、引き受けてきたことで積み上がったものは確かにあります。頼まれやすい人のところには情報も機会も集まりますし、それは断り続けてきた人には来ないものです。
目指す場所は、全部断れることではなく、受けたものを自分で選んだと言えることです。同じ量を引き受けていても、流れで受けたのか、基準に照らして受けたのかで、あとに残るものが変わります。
その意味で、まず変えるべきなのは断る回数ではありません。返事までの時間を数時間だけ持つこと、受ける基準を紙に一行書いておくこと。この二つだけで、引き受けたものの手触りが変わってきます。
自分がどの段階で答えを出しているのか、断るときに何を濁しているのかは、自分では意外と見えていません。断り方診断では、返事のタイミングと言葉の出し方の二つで、いまのあなたの型を見ています。
頼まれごとを断るとき、その場で答える人と持ち帰る人がいます。そして、理由をそのまま話す人と、言葉を濁す人がいます。判断までの速さと、理由の伝え方。この2つの組み合わせで、断り方は4つのタイプに分かれます。10問に答えると、あなたの断り方が関係を守っている場面と、かえって長引かせている場面が見えてきます。
10問 / 約2分 / 結果4タイプ
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